「次は終点、鹿児島中央駅、鹿児島中央駅です。」 各々が下車の準備に取り掛かり、 ざわつき始めた車内にアナウンスが流れ、ハッと目を覚ました。 「着いたみたいやね」 さすが特急といったところか。 いつもは3時間弱はかかる道程も、1時間半ほどで鹿児島に着くことができた。 寝起きのせいなのか 少し重くなった体を起こして電車を後にした。 駅員に乗車券を渡そうと ポケットの中にしまっていた乗車券を取り出すと、それは温かくなっていた。 不思議といつもより 駅員の笑顔も穏やかに見えた。 中央駅の西口に向かう階段を下っていると、ちょうど彼女からの電話がかかってきた。 いつもの少し不機嫌そうな声だった(笑)。 彼女は、何か嫌なことがあると感情を隠しきれない性格だ。 だいたいの事は、 自分に原因がある場合が十中八九なのだが。 誰から見ても分かりやすい性格で、 どうしようもないくらい不器用な人。 それでいて 一番「大切」な人。 そんな彼女を しばらくロータリーで待っていると、 たくさんの車が行き来する中に彼女の車を確認にする事ができた。 車に乗り込むと 彼女が少し腫れぼったくなった目をしていた。 「もしかして、こいつ泣いてたのかな」 内心そう思って胸がざわついた。 話を聞いてみると 単に寝過ぎたためだという事らしく 「はぁ、何だよ(笑)」 少しホッとして軽いため息をついた。 彼女 「ねぇねぇ、この前行ったさ、市役所前のイルミネーション覚えてるでしょ?」 「あ~覚えてるけど?なんで?」 彼女 「何かね、あそこ、9時前になるとイルミネーションが消えて9時になるとまた一斉に付くんだって。だからさ~見に行ってみようよ」 それから、早速車を走らせ始めた。 車を近くのコンビニに停めて 市役所前の並木通りのイルミネーションを見ながら歩いた。 今日の気温は幾分温かく、イルミネーションを見に来ている人の数も多かった。 彼女 「ね~、花束は持って来てくれなかったの~?」 「ん、花束?」 彼女 「え~、だって前会った時、花束欲しいなって言わなかったっけ~私」 「花束か~、そんな話してたような気がするな。てっきり冗談かと思ってたよさ」 彼女 「ふ~ん。でも貰ったとしても、貰った後どうしたらいいか分からないしね。ま~いっか(笑)」 これまで一度だって 花束なんかプレゼントしたことも無かった。 むしろ 「好きな相手に花束を送るやつなんて どんだけキザなんだよ」 少なくとも自分はそう思っていた。 ただ 彼女の最後に言った言葉が、 本当は欲しいのにそれを紛らわしている強がりのように自分には聞こえた。 時間も9時をむかえ 再びイルミネーションが一斉に光りを放ち始めた。 「よ~し、見るものも見たし今からご飯食べに行くか」 彼女 「だね、そうしよ。あ~寒かったぁ~」 再び車を走らせ始め 他愛も無い話に華を咲かせた。 でも そう話してている最中にも 「花束が欲しいな」と話していた時の彼女の顔を思い出していた― : : 花束、か。 ―12月23日―
by yusukeohjino19855
| 2005-12-24 22:19
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