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12月25日

目が覚めた時には
昼の3時を過ぎていた。



カーテンを開くと

少し不機嫌そうな空が広がり
乾いた風が吹いている。



隣りにいたはずの
彼女の姿がそこにはなく
一瞬どうしたのかと思ったが
正午からバイトだということを思い出した。




有名チェーン店である
ケンタッキーフライドチキンが彼女のバイト先。



話を聞けば
この二日間は一年の中で最も忙しいらしい。


いわばこの二日間がかきいれ時。



売り上げも一日で
450万にものぼるという話だった。



以前、
自分が働いていた居酒屋では
最高の売り上げでさえ65万なのだから
想像もつかないほど忙しいことは
嫌でも見当がつく。



布団を片付け
眠気眼のままで
こたつに潜り込んだ。



机の上に目をやると
置き手紙とスペアキーが置いてあるのに気がついた。


かわいく色紙で
切り絵をされていた手紙で
自然と笑みがこぼれた





「たまには可愛いことするんだな」




彼女は深夜0時まで
バイトで帰ってこれないため
その時間をどうして過ごそうか考えた。

ひとまずシャワーを浴びて着替え、散歩へと出かけた。





朝から何も口にしていなかったため
ひどく空腹状態だった。


アパートを出てから
少し坂を下ったところのコンビニで
弁当を買い、そのまま帰ろうと思ったのだが

コンビニを出てから
少しだけ辺りを見回した。









昨日の事を思い出していた。










「まだ時間もあるし、
 ちょっと歩いてみるかな」




それから
いろいろなお店を覗いたりしていると
とても綺麗にイルミネーションが施されている建物を見つけた。




毎年クリスマスが訪れるたびに
わくわくしていた幼かった頃の事を
ふと思い出させてくれる建物だった。





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よく見ると
「OPEN」と書かれた立て札があった。


どうやらここは何かのショップらしい。


店内に入ると
愛らしいぬいぐるみや、クリスマスの飾りが所狭しと
綺麗に並べられていた。

店内には
ワムのラストクリスマスが流れていた。


「ラストクリスマスかぁ」



中学生の頃
初めて付き合った女性とのクリスマスの日の事を
その曲は思い返させた。


付き合い始めて間もなかった二人のクリスマスを、
何とか自分なりにいいものにしようと思い、
姉貴の部屋にあったワムのラストクリスマスを勝手に持ち出した。


それから
ラストクリスマスを何度もリピート再生して二人で聞いていたんだったな。



今思い返せば
何とも恥ずかしい思い出なのだが
今となればという話しで。




その時の初めて付き合った彼女が
今付き合っている彼女だ―







「いらっしゃい」






店内の奥から、一人の中年の女性が
ひょこっと顔を出して挨拶をした。

少し忙しそうに
電話を片手に



女性 「何かプレゼントするのかしら」



「いえ、そういうわけじゃなくて、カワイイ建物だったんでつい」



電話を置いた女性は優しい顔で
イルミネーションの飾りについて色々話をしてくれた。

一ヶ月イルミネーションをつけているだけで
維持費が40万はかかるんだとか、

息子がプレゼントの包みを持って帰ってきたと思えば
彼女のクリスマスプレゼントで少し寂しかったとか、

何でもない世間話を楽しそうに話してくれた。






女性 「私はね、グッチとぬいぐるみが大好きなのよ」






その女性は自分の母親より一回り年上くらいなのだろうが
とても若々しくカワイイ女性に見えた。




女性 「ここにあるモノもね、ほとんどが手作りのものばかりなのよ。私がいろんな所に出かけ
     てここに置いてもらっている物なの。」



「へぇ、そうなんですか、
本当にどれも愛嬌があって可愛いものばかりですね」



そういうと、
その女性はさも嬉しそうに
ひとつひとつ手作りの人形や飾りを丁寧に説明してくれた。





「これカワイイですね」




店内に入ったときから、
たくさんのぬいぐるみがある中で何度も見返していた
クマのティディベア。



女性 「それはね、本当は結婚式場用で使うものだったんだけど
     私が無理を言って引き取ってきたものなのよ」





とても可愛らしいぬいぐるみだった。
  


 
女性 「きっと彼女さん喜ぶんじゃないかな」




「あは、そうですかね。
それじゃあ、これ包んでもらっていいですか」




女性 「ありがとうね。それじゃあ包み終えるまでコーヒー飲んで待っときなさい」





ブラックコーヒーの味は少し苦かったが
あの中学生の頃とは、確実に変わっていたコーヒーの味に
時の流れを感じていた。





 俺も、少しは大人になってきてんのかな―






女性 「はい、お待たせね。可愛く包んでおいたから」















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「ほんとに、今日はどうもありがとうございました」


浅い一礼を交わして、
その場を後にした。


とても温かくて充実した時間を過ごさせてもらった。


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 また来ますから―



そう思い、いつの間にか日も暮れた町を
また歩き始めた。




それから2時間ほど街を歩き回り、
彼女のアパートへと帰った。






         :
         : 







ピンポーン・・・・


ピンポーン・・・・







微かにインターホンのなる音が耳に聞こえた。

歩き疲れたのか
つい寝てしまっていた。


時計に目をやると
針は0時をさし
日付は25日に変わっていた。



その時、彼女が帰ってきたのだろうと分かり
玄関に急いだ。




彼女  「もぉ~、やっぱ寝てたし!」



「あは、許してよ」




「これで・・・さ」



























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「ほんとにお疲れ様。メリークリスマス」








                                          ―12月25日―
by yusukeohjino19855 | 2005-12-25 23:59 | 〇日常生活
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